月一コラム第十六弾!令和3年3月号

 2021年も早いもので3か月が過ぎようとしています。昨年は新型コロナウイルスに翻弄された1年でした。今年こそはこの感染症克服への道筋が見えるかと思っていましたが、残念ながら全国的に流行の「第4波」がやって来ようとしています。

 今月は、首都圏1都3県でいわゆる「緊急事態宣言」が解除されましたが、なぜ解除されたのかの理由もよく分からないままに、次の流行がはじまりつつあります。これまでの新型コロナウイルス対策をしっかり総括するとともに、もう少し様々なデータを精緻に収集・分析・利用することが大切ではないかと私は考えています。

 

 例えば、これまでの対策が不十分だったから年末年始の「第3波」がやって来たのか?あるいはこれから「第4波」がはじまりつつあるのかを考えないといけません。言い換えれば、昨年秋に徹底的に新型コロナウイルスを叩いておけば「第3波」は来なかったのか?という質問です。おそらく正解は、「どんなに対策を打っていても年末年始には『第3波』がやって来た」だと思います。ここはマスコミ報道も不正確で「『緊急事態宣言』を早く解除すれば『第4波』がやって来てしまう。」という報道がたくさん見られました。実は流行の「第○波」は人間の力では動かせないのだと思います。

 

 3月8日(月)、私はNHK中継が行われた参議院予算委員会の質疑の中で1枚のパネルを出しました。世界各国において新型コロナウイルス新規感染者数のいわゆる「第3波」のピークを迎えた日付を示すグラフでした。このグラフでは、北半球(冬の季節)の国であっても、南半球(夏の季節)の国であっても、徹底的なロックダウンをした国であっても、緩やかな外出制限にとどめた国であっても、ほぼ「第3波」のピークを迎えた日付は2020年12月下旬から2021年1月上旬に集中しています。

 つまり「季節」や「対策の内容」によって新型コロナ流行のピーク時期が動くことはないということです。言い換えれば、流行の波は「人為的」なものではなく「ウイルスのご機嫌次第」だったと言えます。

 

 では、本当に政府がやらなければならないことは何なのでしょうか。それは世界の流行状況を毎日、日本の国民に伝えて、もし海外のいくつかの国で感染者数が増え始めたら、そう遠くない時期に日本国内でも感染者数が増え始める可能性が高いということをアナウンスすることだと思います。「天気予報」のようなものです。「本日の新規感染者数は東京都が○○人、大阪府が△△人・・・」ばかりでは、どうすれば良いのか国民には分かりません。「緊急事態宣言=大雨暴風雨警報」を出すのか、解除するのかの議論ばかりでは何の解決にもならないのです。それより「まもなく新型コロナウイルスの勢いが増す可能性が高いので、急ぎの重要な用事は早めに済ませてください。その後は外出自粛の可能性が高いです」の方が、国民も心の準備ができて良いのではないでしょうか。

 

 もちろん、様々な感染防止対策、まん延防止策に意味がないと言っている訳では決してありません。「ピークの時期」は「ウイルスのご機嫌次第」ですが、「ピークの高さ」は人間の努力で下げることが充分可能だからです。

 

 数理モデルを使った流行予測はなかなか当たりません。もちろん学問としてさらに発展してほしいと願っていますが、目の前で起こっている状況を分析して対策に生かすという地道な作業も、専門家の皆さんには是非取り組んでいただければと思っています。

 

梅村 聡