月一コラム第二十二弾!令和3年9月号

 プロ野球シーズンも終盤を迎え、大阪市を本拠地とするオリックス・バファローズは現在パ・リーグ2位につけています。もしクライマックスシリーズを勝ち抜けば、1996年以来25年ぶりの優勝となります。長年優勝から遠ざかっているオリックス・バファローズですが、その前身は、西宮球場を本拠地とする「阪急ブレーブス」でした。阪急西宮北口駅のすぐ近くにあった西宮球場は、私が生まれ育った大阪・十三から電車で10分のところにあり、祖父、父、私と3代にわたって通い詰めた球場(現在は阪急西宮ガーデンズ)でもありました。阪急ブレーブスは私が生まれた昭和50年から3年連続日本一に輝き、私が記憶にある時期でも毎年Aクラスに入る「常勝球団」でした。

 山田久志投手はアンダースローで通算284勝をあげた阪急ブレーブスのエースであり、下から浮き上がってくる直球は、打者から見るととんでもなく速く感じるらしく、私も「先発ピッチャー・山田久志」の西宮球場に行けば、ほぼ阪急の勝ち試合を見ることができました。

 福本豊選手は、いまは楽しい解説者をされていますが、通算1065盗塁を記録した「世界の盗塁王」です。現在のプロ野球のピッチャーは塁上にランナーがいるときに「クイックモーション」という素早い投球をしますが、これは南海・野村克也捕手が福本選手の盗塁を阻止するために考案した投げ方と言われています。

 このように、日本プロ野球史上、大変な記録や記憶を残した選手がたくさんいた阪急ブレーブスの最大の弱点は、西宮球場にお客さんが入らないことでした。いつ行っても観客席はガラ空きで、平日のナイターはおそらく1000人も入ってなかったのではないでしょうか。本を読んだり、寝ているお客さんも多く、今から考えればすごい選手がプレーしているのに本当にもったいないことだったと強く思います。なんとか西宮球場にお客さんを呼ぼうとした阪急球団は、福本豊選手と阪神競馬場の競走馬を試合前の西宮球場で「競走」させるという「人馬競走」を企画・決行しましたが、馬と一緒に球場内を走らされた福本豊選手は内心忸怩たる思いだったと想像します。そのような「黒歴史」を経て、1988年(昭和63年)、ついに阪急電鉄本社は「阪急ブレーブス」を売却してしまいます。すべては不人気からくるものでした。

 その西宮球場から直線距離で2キロメートルほどのところに阪神タイガースの本拠地・甲子園球場があります。阪神タイガースも現在のオリックス・バファローズと同様、20年以上優勝から遠ざかっていた時期がありましたが、阪神タイガースは勝っても超満員、負けても超満員、勝ち負けは関係ないのか、という球団経営でした。同じ兵庫県西宮市を本拠地とする「阪急ブレーブス」と「阪神タイガース」でしたが、理由はよくわかりませんが、人気は雲泥の差でした。

 まもなく衆議院総選挙が始まります。選挙を通じて、有権者は「球団」を選ぶのでしょうか?それとも山田久志投手や福本豊選手の「プレー」を見に来るのでしょうか?今の政治報道は、今回の自民党総裁選挙もそうですが、監督インタビューしか見せない「プロ野球中継」のような気がします。政治家各自が動画やSNS等で自由に発信できる時代になりました。私は「プレー」でお客さんを呼べる政治家であり続けたいですし、これからもそのような努力を続ける議員を目指します。

 

梅村 聡