月一コラム第九弾!令和2年8月号

 8月10日(月・祝)、俳優の渡哲也さんが亡くなられました。78才ということで、昨今にしては若くしてお亡くなりになられたかと思います。本当に残念です。

 私の祖母は、渡哲也さんの大ファンでした。祖母の家には歌手・渡哲也のレコードが大量にありました。私も物心がつくころからその歌を聞いており、私が幼稚園児の時は「くちなしの花」「水割り」「日暮れ坂」「みちづれ」といった渡哲也さんの名曲を口ずさんでいて、担任の先生にはたいそう不思議がられていました。毎週日曜日の夜8時からは、テレビ朝日の「西部警察」を見て、放送終了後、祖母と「大門団長(渡哲也扮する刑事の名前です)のショットガンは長距離なのによく命中した」とか「犯人アジトの爆破は最高だった」とか、言い合うのが「恒例行事」でした。小学生の頃のアルバムを見ると、私の頭は「角刈り」。サングラスはかけていませんでしたが、ヘアスタイルは「西部警察・大門団長」風にしていたのです。それくらい、私の心をとらえて離さなかったのが、渡哲也さんでした。

 そのような大スター渡哲也さんが、晩年は、闘病生活を続けていたとのことです。

 急性心筋梗塞や肺気腫の増悪などで入退院を繰り返し、最晩年は酸素ボンベが手放せなかったと報じられていました。それを聞いた瞬間、私はピンときました。

 おそらく原因は「タバコ」だと思います。今でこそ、「おっちゃんの嗜好品=タバコ」ですが、若き日のダンディーな渡哲也さんには「小道具・タバコ」がとてもマッチしていたのです。

 それにしても当時の「西部警察・大門団長」はすさまじい喫煙量でした。朝食前にタバコ、西部署内の執務室でタバコ、張り込み中にタバコ、事件が解決したらタバコを吸いながらスーパーZ(特殊捜査車両)を運転…一日60本ペースではなかったでしょうか。もしタイムマシンがあったら40年前に戻って、「西部警察」の脚本家と監督に「大門団長を、タバコを吸わない役柄に変えてください」とお願いしたい気持ちです。結果論ですが、若いころからのタバコの積み重ねが、渡哲也さんの命を縮めたのだと思います。

 近年、「禁煙外来」に医療保険が適用されることになりました。タバコの値上げ、受動喫煙防止の取り組みを強化する等々、厚生労働省もあの手この手で対策を講じていますが、なかなか喫煙率が下がりきらないのが現状です。医師の立場から言えば、タバコを吸って体に良いことは何一つありません。

 昭和の大スターがまた一人旅立たれましたが、これを機に、皆さんにはもう一度、タバコの害について見つめ直していただきたいと思います。

 最後になりますが改めて、渡哲也さんのご冥福を心からお祈り申し上げます。

梅村 聡